Claudeが過去の会話を覚えてくれる、新機能「Search and reference chats」で何が変わるのか?
ビジネスパーソンに対するインパクト、ChatGPTのメモリ機能との違いと、その有効性について解説します
今年はお盆休みを1週間とりました。1週間仕事から離れると、「前は、どこまで取り組んでたっけ?」となりました。
そして、Claudeを立ち上げたら、なんと「会話を検索できるようになりました!試してみますか?」と言われたので、試したところ、ドンピシャの体験をしました。
お試し機能が「Claudeさん、最近の会話のハイライトを教えていただけますか?」とプロンプトを自動送信し、私が取り組んでいたことを、まとめてくれたのです。
本当に、笑ってしまいました。
今日は、この新しい「会話を検索する」機能について紹介します。ChatGPTとの違い、活用のアイデアなども紹介します。
Claudeの新機能「Search and reference chats」とは
2025年8月12日、Anthropic社からClaudeユーザーにとって大きなアップデートが発表されました。Claudeが過去の会話を検索して、新しい会話で参照できる「Search and reference chats」機能が追加されたのです。
利用できるユーザー
現在、Claude Max、Team、Enterpriseユーザーを対象に順次展開されており、他のプランにも「まもなく」提供予定です。
使い方について
使い方は非常にシンプルです。Claudeを一緒に働いているパートナーだと思って、過去のやりとりについて自然に尋ねてみてください。
例えば:
「先週話していたマーケティング戦略の件、どこまで進んでいたっけ?」
「前回のプログラミング学習で詰まったところを教えて」
「最近作成していたプレゼン資料について振り返りたい」
「あのプロジェクトの進捗、どうなってたっけ?」
過去の具体的な内容を思い出せなくても大丈夫です。「こんなことをしてたっけ?」といった曖昧な質問でも、Claudeが関連する会話を見つけ出してくれます。
思いつかない方は、とりあえず「Claudeさん、最近の会話のハイライトを教えていただけますか?」で試してみてください。 これだけで、最近の重要な議論や作業内容を振り返ることができます。
ChatGPTの「Memory」機能との違い
この機能を理解する上で重要なのは、ChatGPTの類似機能との根本的な違いです。
ChatGPTのアプローチ
ChatGPTは4月にメモリー機能をアップデートし、すべての会話を保存して新しい質問や指示に対する回答をパーソナライズするために、それらの記録に依存するようになりました。基本的には「常に記憶して、常に活用する」アプローチです。
Claudeのアプローチ
一方、Claudeは明示的に指示されたときのみ過去の会話を検索するアプローチを採用。ユーザーが意図的に過去の文脈を求めたときだけ検索を実行します。
これは、優れたアプローチです(あとで説明します)。
ChatGPT5との関係
ChatGPTの「常に記憶し、常に活用する」は、便利そうですが、AIやAIサービスの仕組みを理解しておかないと、非常に危険だと思っていました。特に、ChatGPT 4oは、ユーザーの意見に過度に迎合(合わせてくる、褒める)してきます。
この性質によって盲点が増えやすくなったり、ユーザーに合わせる回答をする結果、ハルシネーション(間違い、嘘をつく、幻覚)が起こりやすくなっていました。
これらの問題を解決するためにも、ChatGPT 5では、迎合する割合が減ったのだと推測しています。その代わり、4oの迎合する感じを楽しんでいた方々からは、ChatGPT 5は不評を買っています。
なぜClaudeの方がビジネスにピッタリなのか?
話を戻します。
過去の会話を検索できる機能(Claude)と、メモリ機能(ChatGPT)の違いからも、Claudeの方がビジネス利用には圧倒的に適していると、私は考えています。その理由は以下の通りです。
フィルターバブルの回避 ユーザー依存型の自動記憶は便利そうに見えますが、フィルターバブル(自分の興味や考えに合った情報ばかりが提示される状態)のような状態を引き起こす危険性があります。常に過去の偏見や思考パターンに基づいて回答が調整されてしまうと、新しい視点や盲点に気づきづらくなってしまいます。
専門家としての価値を維持 ClaudeおよびAIが持つ、ユーザーとは違う別の専門的な知識、違う視点からのアドバイスや示唆を得ていくとき、自動でユーザー依存する機能は危うい存在です。専門家として客観的で多角的な視点を提供するためには、過度なパーソナライゼーションは弊害となることがあります。
意図的なコントロール しっかりと意図的にコントロールできることが大事です。ユーザーが意図的に、過去の会話を利用しようと思った時に使うというのは、非常に優れたアイデアです。意図的でないと、エコーチェンバー(同じような意見ばかりが反響し合って、多様な視点が失われる状態)みたいになってしまい、それを避けることができません。
ChatGPTの常時記憶アプローチは、一見便利に思えますが、実際には思考の幅を狭めてしまう可能性があります。Claudeの「必要なときだけ検索」というアプローチは、この問題を回避しながら利便性を提供する優れた設計です。
上記のような理由から、私は、ChatGPTのメモリ機能を使った後、すぐに「オフ」にしました。そして、Claudeが同じような機能を出した時、ChatGPTのようにならない、もっと良い実装をしてくれると密かに期待していました。
今回、まさに期待通りでした。ますます、ファンになりました。
活用アイデア
この機能を最大限活用するための具体的なプロンプトアイデアをご紹介します。
プロジェクト管理系
「○○プロジェクトの進捗状況と次のステップを教えて」
「今月取り組んでいる案件で、まだ完了していないタスクはある?」
「クライアントAとの打ち合わせで決まったことを振り返りたい」
学習・スキルアップ系
「プログラミング学習の進捗と、次に学ぶべき内容を教えて」
「マーケティングについて学んだことをまとめて、知識の整理をしたい」
「最近読んだ本やコンテンツで印象的だった内容を振り返ろう」
アイデア・企画系
「新サービスのアイデアについて話し合った内容をまとめて」
「ブログ記事のネタで検討していたものを振り返りたい」
「マーケティング戦略で出てきたアイデアを整理しよう」
振り返り・分析系
「今週の会話で重要だった気づきや学びを教えて」
「最近解決した問題と、その解決方法をまとめて」
「過去1ヶ月で達成できたことと、残課題を整理したい」
トラブルシューティング系
「以前同じような問題に遭遇したことがある?その時の解決策は?」
「技術的な問題で困っていることについて、過去に相談したことがあるかチェックして」
会話検索で、ビジネスパーソンの働き方が変わる
この機能は、特にビジネスパーソンの働き方に革命的な変化をもたらします。
複数プロジェクトの並行管理が楽になる
現代のビジネスパーソンは、複数のプロジェクトを同時並行で進めることが当たり前になっています。私も、並行して様々なことを行なっています。
すると、プロジェクト間を行き来するたびに「前回どこまで話していたっけ?」となり、文脈を思い出すのに時間がかかっていました。
この機能により、プロジェクトごとの進捗や課題、アイデアを瞬時に思い出すことができ、プロジェクト切り替えのロスタイムが大幅に削減されます。
クライアントワークの品質向上
フリーランスやコンサルタントの方であれば、複数のクライアントとの過去のやり取りを正確に把握することで、より精度の高い提案や継続的なサポートが可能になります。
「前回のミーティングで○○の件について話していましたが...」といった形で、クライアントとの関係性をより深く、継続的に築いていけるようになります。
長期的な戦略立案の精度向上
過去数ヶ月にわたる戦略議論や市場分析の内容を振り返ることで、より長期的で一貫性のある戦略立案が可能になります。
「あの時考えていたアイデアは今どう発展させられるか?」「過去の失敗から学んだ教訓を今回のプロジェクトにどう活かすか?」といった、より高度な戦略的思考を支援してくれます。
専門知識の蓄積と活用
業界特有の知識やノウハウについて過去にClaudeと議論した内容を参照することで、専門性をより深く積み重ねていくことができます。一度学んだことを無駄にせず、継続的にスキルアップしていく仕組みが構築できるのです。
まとめ
Claudeの「Search and reference chats」機能は、AI活用の体験を大きく向上させる重要なアップデートです。ChatGPTとは異なる「明示的な検索」アプローチにより、エコーチェンバー効果を避けながら、必要なときに過去の文脈を活用できます。
この機能により、AIとの関係がより深く、より継続的なものになり、学習や仕事の効率が大幅に向上することが期待できます。
学習や仕事でClaudeを活用している方は、ぜひこの機能を試してみてください。まずは「Claudeさん、最近の会話のハイライトを教えていただけますか?」から始めて、AIとの新しい関係性を体験してみてください。
あなたも過去の会話を振り返りながら、新しい学びを積み重ねていく体験を楽しんでみませんか?
プロジェクト機能を使って、アイデアストックをしてますが、この機能があれば、「何でもかんでもプロジェクトにして分けておく」ことをしなくても良くなりそうですね。
プロジェクトごとに分けてやり取りしていても、それぞれの対話でよく脇道に逸れたりすることがあり、
しかもそれが意外と深くて良い内容だったりすると、あとでそれを探すときに、
「あれ? どのプロジェクトのどのスレッドだったっけ?」
と思い出せず、仕方がないので、何でもかんでも「まとめ」を作って、いちいち保存していました。
今後は、そんな面倒なことをしなくても、簡単に探したり見つけたりできそうで、とても便利な機能ですね。